つるつるこわい - 2/2

◆ゲームマスター向け情報

あかね町に屋台のラーメン屋を開業したばかりの人間がいました。
彼は元々盛り場でサラリーマンをしていましたが、ある日の仕事帰りにもののけ横丁(p.196)に迷い込んでしまいます。レトロな屋台風景を目にした彼は、昔ラーメン屋を目指していた夢を思い出し、脱サラして開業することにしました。
そんなラーメン屋に目を付けたのが、もののけ横丁のヨナである「ムジナ」です。
ムジナはラーメン屋が商品である「夢」をつまみ食いしていったと言いがかりをつけ、ラーメン屋から取り立てを行おうとしています。
ラーメン屋の周囲にはムジナが化けたのっぺらぼうの怪が現れるようになり、お客さんが寄り付きません。
マヨイビトになりかけているラーメン屋は、このままではもののけ横丁へ連れていかれてしまうでしょう。
猫たちはムジナを倒し、この事態を解決できるでしょうか。

●冒険の舞台

このシナリオの舞台は、あかね町の団地周辺と盛り場エリアです。
登場するボス猫として「ムウ」を設定していますが、PCの住んでいるエリアやボス猫の設定に応じて変更してかまいません。

 

◆導入フェイズ

以下のように導入フェイズを行います。

●はじめの一歩

PCたちは昼間、あかね町で普段通りに暮らしています。
飼い猫や野良猫の場合、1匹の猫が噂話にやってきます。
猫の話では、最近夜になると怪しいものが出ると猫やヒトの中で噂になっているようです。
きっと今日の集会でもその話題でもちきりになるだろう、とPCにほのめかします。
迷い猫や、ヒト町をなわばりにしている猫の場合、ひなたぼっこをしながら夢心地になっていると、不思議な光景が浮かんできます。
どこか懐かしい夜の景色に、ほわほわと浮かぶ灯り。がやがやと、ヒトの言葉のような、そうでないような言葉が聞こえてくるのです。
そんなもののけ横丁の夢を見ていたPCは、近くにヨナの匂いを感じ取ります。

●冒険の予感

その日の夜、猫たちは広場に集まります。
広場の公園にはほかの猫も何匹か集まっていて、ヒト町の方で何かこわいものが出るらしい、と噂しあっています。
そこへ尻尾を逆立たせた野良猫が駆け込んできます。

《台詞例》
「で、で、出たのーーー!!!!!!」
「つるつるなの、こわいの!!!!!」

パニックになっている猫の話は要領を得ませんが、ヒト町で何かが出没したことがわかります。
集会に来ていた他の猫は、怖がって散り散りに逃げてしまいます。
すべり台の上にいたボス猫のムウは、猫の掟・第五戒について語ります。
ヨナが縄張りを侵そうとしているのかもしれない、としてPCたちに解決するように命じます。

今回の冒険の目的は、「町のみんなをこわがらせているのが何者かつきとめ、解決すること」になります。
冒険の目的を説明したら「気持ちの決定」を行います。
GMは、手がかり1「こわいのどこだ」を公開してください。

 

◆夜回りフェイズ

夜回りフェイズには、以下のイベントフェイズが発生します。

●つるつるこわい① 条件:ヒト町で〈ラーメン屋〉に行く
●つるつるこわい② 条件:「●つるつるこわい①」のイベントが終わった次のサイクル開始時
●〈ラーメン屋〉のはなし 条件:〈ラーメン屋〉のヒトを盛り場へ連れて行く
●のっぺらぼうたいじ 条件:〈ラーメン屋〉のヒトのいるエリアで「毛づくろい」をする

●つるつるこわい①

PCたちが〈ラーメン屋〉に行くと発生します。

〈ラーメン屋〉にたどりつくと、赤いひらひらが風に揺れ、いい匂いが猫たちの方までただよってきます。
丸くて赤い灯りの下に、1匹の猫がいるのが見えます。
猫はくしくしと顔を洗っています。
猫がPCたちの方に向き、顔をするりとなでると、その顔には目も鼻も口もなく、ひげはおろか毛の一本も生えていません。
つるつるののっぺらぼうの顔が夜の闇に浮かび上がります。

PCは全員【毛並】で危険度2の判定を行います。
失敗すると、ランダムで持っている【気持ち】1つを〔こわい〕に変更します。
1匹以上失敗したPCがいた場合、その場から逃げ出してしまいます。集会全員で他のエリアを1つ選択して移動します(移動後、それぞれ1回ずつ「遭遇表」を使用します)。
全員成功した場合、のっぺらぼうの猫はいつの間にか姿を消してしまいます。
また、成功失敗にかかわらず、〈ラーメン屋〉のヒトがためいきをつくのがPCたちには聞こえます。
不思議なことに、「はぁ……どうしてだろうなぁ……」とつぶやくそのヒトの言葉がPCたちにはなんとなく理解できました。

イベントが終わったら、GMは手がかり2「ためいきのヒミツ」と、手がかり3「正体見たり」を公開してください。

●つるつるこわい②

「●つるつるこわい①」のイベントが終わった次のサイクル開始時に発生します。

PCたちが夜回りをしていると、ムウが姿を見せます。
「猫の掟はもちろん知っているな?猫のつとめを果たさねばならない」
「こんなふうににゃあ……」
声をかけてきたムウの顔がつるんと卵のようにむけてしまいます。
PCたちはのっぺらぼうのムウにおどかされます。

PCは全員【毛並】で危険度2の判定を行います。
失敗すると、ランダムで持っている【気持ち】1つを〔こわい〕に変更します。
1匹以上失敗したPCがいた場合、その場から逃げ出してしまいます。集会全員で他のエリアを1つ選択して移動します(移動後、それぞれ1回ずつ「遭遇表」を使用します)。
のっぺらぼうのムウの姿は、いつの間にか消えてしまいます。

●〈ラーメン屋〉の話

〈ラーメン屋〉のヒトを盛り場エリアに連れて行くと発生します。

以前は盛り場で働いていた〈ラーメン屋〉のヒトは、背の高い建物を見上げて懐かしそうにしています。
猫たちに盛り場へ案内されるという不思議な経験をした〈ラーメン屋〉のヒトは、夢の中でもののけ横丁に迷い込んだことを思い出します。

《台詞例》
「前に不思議な場所に行ったんだ。あれはもしかしたら夢だったのかもしれない」
「仕事帰りに見たことのないレトロな町に来てて……」
「見たことないものばっかり売ってたっけ……。その町を歩いていたら、昔ラーメン屋をめざしてたこと、思い出したんだったなあ……」

〈ラーメン屋〉のヒトは、ダシを取るのに使うにぼしを猫たちにくれます。
食べた猫は、【やる気】を1D6点回復するか、好きな【気持ち】を1つ獲得します。

●のっぺらぼうたいじ

PCたちがムジナと対決することを決め、〈ラーメン屋〉のヒトのいるエリアで「毛づくろい」のステップを使用すると発生します。

〈喫煙スペース〉でムジナを待ち構えたい場合、〈ラーメン屋〉のヒトを盛り場まで連れて行く必要があります。
盛り場で「◎呼ぶ」のステップを使用するか、集会同行者(p.103)にするとよいでしょう。
GMは、PCたちが〈ラーメン屋〉のヒトを【子分】にしている場合、集会同行者にするようアドバイスするとプレイヤーにやさしいでしょう。
盛り場で待ち構えない場合、ムジナとはヒト町で対面することになります。

「毛づくろい」をしてムジナを待ち構えていると、「毛づくろい」を使用したPCにそっくりな姿の猫が、いつのまにか近くにいます。
猫は顔をなでてのっぺらぼうになろうとしますが、〈喫煙スペース〉で待ち構えていた場合、煙にせきこんで正体を現してしまいます。
〈喫煙スペース〉にいなかった場合も、ムジナはPCたちに気づいて警告します。

《台詞例》
「いやはや、カモ……いえ、お取引先の様子を確かめていたら、邪魔な猫たちがついてるじゃありませんか」
「困りますよ。こちらのお客様は、もののけ横丁の取引先ですから」
「横丁にお越しになって『夢』の味見をなすったでしょう。ワタクシは、利子を含めて取り立てにまいったのですよ」
「そちらのヒトは返せるアテがおありでない。ですので身ぐるみ取り立てさせていただこうという次第なのですよ」
「どこまでも邪魔だてなさるなら、こちらも実力行使とまいりましょう」
「厄介なケムリがあるとはいえ、ワタクシにも変化の術はいくつもあるのですよ」(〈喫煙スペース〉にいる場合)

PCたちを撃退するために、ムジナの姿がみるみる巨大化します。
PCたちは【毛並】で危険度3の判定を行います。
失敗すると、〔こわい〕の【気持ち】を1つ獲得します(既に【気持ち】を3つ持っている場合は、ランダムで入れ替えます)。

 

◆戦闘フェイズ

ムジナと遭遇すると戦闘フェイズになります。エネミーは「ムジナ」1体です。〈ラーメン屋〉のヒトは戦闘フェイズに参加しません。
状況表は「一般的な状況表」を使用します。

 

●終了条件
・ムジナを撃退する(PCの勝利)
・特別ステップ「けむにまく」を3回成功させる(PCの勝利)
・PCが逃走する(PCの敗北)
・PCが全員さよならか捕獲状態になる(PCの敗北)
・【時間】が0点になる(PCの敗北)

 

「ムジナ」立ち絵

【エネミー・ムジナ】
 属性:ケモノ・ヨナ ヤバさ:3
 エネミー能力:取立(ルールブックP.197)
 エネミー能力:再度の怪
 効果:このエネミーの【ヤバさ】は、元の【ヤバさ】に加えてPCが持っている〔こわい〕の【気持ち】の合計数だけ増加する。
 特別ステップ:集中攻撃(ルールブックP.133)

PCたちが盛り場の〈喫煙スペース〉近くで戦闘フェイズを開始する場合、特別ステップ「けむにまく」を使用することができます。「けむにまく」は戦闘フェイズの猫の行動として使用できます。
もしPCの数が多いなどで難易度を上げたい場合は、「けむにまく」を行う前にやる気チェックに成功する必要があることにしてもよいでしょう。

★特別ステップ「けむにまく」
〔こわい〕以外の気持ち1つを消費して使用する。
【運動】か【鳴き声】で危険度2の判定を行う。
成功すると、ムジナのエネミー能力【再度の怪】を無効にすることができる。

PCが勝利すると、ムジナは〈ラーメン屋〉のヒトをヨナにすることを諦めます。
これ以上深入りするのは損だと判断して、しっぽを巻いてもののけ横丁へ逃げていきます。

《台詞例》
「いけませんいけません、これ以上はワタクシの損の方が大きくなります」
「欲をかいたのが失敗しましたか、このニンゲンはあきらめて引き上げるとしましょう……」

〈ラーメン屋〉のヒトは、狐につままれたような顔で、首をかしげています。
マヨイビトになる心配がなくなったのでもう言葉はわかりませんが、猫たちに助けられたような感覚があるようです。
PCたちへ感謝の言葉をつぶやいて、にぼしをご馳走します。
夜回りフェイズを終了してください。

 

◆結末フェイズ

猫たちが冒険の目的を果たして帰還した場合、広場に戻って報告を終えると、ほかの猫たちはPCたちの勇敢さを褒め称えます。
満足そうにしているムウの顔も、つるつるではなく、いつもの毛むくじゃらの顔をしています。
PCたちが後日ヒト町へ夜回りに出かけると、〈ラーメン屋〉のヒトが屋台を出しています。
いい匂いのする屋台には、座ってつるつると麺をすするヒトがいます。
〈ラーメン屋〉のヒトはこれからもPCたちにおやつを振舞ってくれるでしょう。

もしPCたちが冒険の目的を達成できなかった場合、〈ラーメン屋〉のヒトはヨナになってしまいます。
後日、あかね町では店主の姿が無く明かりも灯っていない屋台、「燈無ラーメン」の怪談が広まるようになります。その屋台を見かけると不幸になると噂が立ち、もののけ横丁へ連れ去られていく猫やヒトが増えていきます。あかね町の不思議がひとつ増えることになるかもしれません。

「その後表」、「猫メンテ」、「成長」の処理を順番に行い、セッションを終了してください。
お疲れさまでした!

◆手がかり一覧

手がかり1「こわいのどこだ」

条件:冒険の予感
場所:ヒト町
危険度:1

「つるつるで、こわい」のにおどかされた猫やヒト。
でも、どこで見たのか忘れてしまったみたいニャ。
ヒト町のどこかだったはずニャ。

【真実】
猫たちがこわいのを見かけた場所は、新しくできた〈ラーメン屋〉ニャ。
〈ラーメン屋〉には、鉄のマモノみたいな丸い足がついてるニャ。
〈ラーメン屋〉を引っぱったヒトが、夜の間ヒト町を歩き回ってるニャ。

ヒト町にいるとき、〈ラーメン屋〉に行くことができる。

 

手がかり2「ためいきのヒミツ」

条件:のっぺらぼうに遭遇する
場所:〈ラーメン屋〉
危険度:3(集会の誰かが〈ラーメン屋〉のヒトを子分にしているとき、危険度は1になる)

静かになったヒト町で、〈ラーメン屋〉のヒトが、ためいきをついている。
何か悩みがあるみたいニャ。

【真実】
前は別の暮らしをしていたけれど、〈脱サラ〉してお店を始めたばかり。
近くにのっぺらぼうが出るせいで、ヒトが誰も来ないのニャ。
もののけ横丁に迷いこんだことがあって、その時ヨナに目をつけられてしまったニャ。
このままだとマヨイビトにさせられそう!

この【真実】を共有した後、〈ラーメン屋〉のヒトと同じエリアで「毛づくろい」をすると、のっぺらぼうを待ち構えることができる。

 

手がかり3「正体見たり」

条件:のっぺらぼうに遭遇する
場所:どこでも
危険度:2

あののっぺらぼうが、町でみんなをおどかしているニャ。
ヨナの気配がする!正体をあばいてやるニャ!

【真実】
のっぺらぼうの正体は、もののけ横丁に住むヨナの手先の「ムジナ」ニャ。
ムジナはケムいのが苦手で、かぐと変身の術がとけてしまうニャ。
〈喫煙スペース〉にうまく追いこんだらいいんじゃないかニャ?

盛り場エリアにいるとき、〈喫煙スペース〉に行くことができる。

 

◆参考文献
小泉八雲作『貉』、戸川明三訳、青空文庫、https://www.aozora.gr.jp/cards/000258/files/42928_15332.html

 

 

公開:2026年2月22日